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ゼロトップ+ポゼッション

2012年にスペイン代表が採用した4-6-0フォーメーションについての想定予想です。

モデルの想定・その他のケース

左図は、2012年のEURO2012で主力として使われていた選手を並べた想定メンバーです。
EURO2012の決勝vsイタリア戦のメンバーでもあります。

専門のFWを置かない、いわゆる「ゼロトップ」システムになります。

前線の攻撃面を担当する3人は、それぞれ右からダビド・シルヴァ、セスク、イニエスタで、シルヴァはともかく、ポリバレントは高いとはいえ、本質的にはセンターハーフタイプと言ってよい2人が入ります。

中央の司令塔にはシャビが構えて、そのシャビを支える中盤の底にブスケツとシャビ・アロンソが入ります。

この6人が中盤で、スペインの特徴でもある高いポゼッション率を維持します。

左のアルディ、右のアルベロア、ともにスピードがあり、攻守にバランス良いプレーができるサイドバック。

センターバックは、あたりに強いピケと、間合いを取るのがうまくカバーリングの能力も高いセルヒオ・ラモスが務めます。

最後の砦には、長いこと世界トップクラスのGKとして名声を確立しているカシージャス。
代表チームのキャプテンも長く務めており、クラブに代表に欠かせない存在となっております。

2012年当時のスペイン代表

率いる監督は、スペイン人のビセンテ・デル・ボスケ。
かつて、「銀河系」レアル・マドリードの監督をつとめリーガやCLを制したこともある監督です。
2008年にEURO2008を制して、スペイン待望のビッグタイトルを手にした「賢人」アラゴネス監督の後任として抜擢されました。

前任者が使いこなした「クワトロ・フゴーネス」を引き継ぎながら、徐々に世代交代を推し進め、攻守にバランスの良いポゼッション重視のサッカーを披露、2010年の南アフリカW杯を制覇し、EUROとW杯の連覇を達成した2番目のチームとなりました。

更に、W杯からベースのメンバーを維持しつつ、微調整を重ねたスペイン代表は、その強さを維持し続け、2年後のEURO2012の予選を全勝で通過し、ディフェンディングチャンピオンであり大本命としてEURO2012に臨むことになります。

迎えたEURO本戦。守備の要プジョルと、絶対的なストライカーFWのビジャを怪我で欠き、更にはフェルナンド・トーレスのクラブでの不振もあったためか、センターフォワードを置かない「0トップ」システムを採用。

0トップがうまくはまったとは言いがたく、また、常に0トップを使っていたわけでもありません。
F・トーレスやネグレドといった純粋なセンターフォワードを使う試合もあり、決定力不足に悩まされたりもしましたが、なんとか決勝のイタリア戦までたどり着きます。

決勝のイタリア戦は、イタリアがカテナチオからの脱却を果たした近代的で攻撃的なチームと評され、ややもすれば王者スペインも苦戦するのではないかと思われましたが、準決勝からの空き時間の1日差が大きかったのか、イタリアは前半から動きが鈍く、更に交代枠を使い切った後で、モッタが負傷退場。
ただでさえ疲労で動きが悪く、2点のビハインドを背負って10人でプレーするとなって、完全に戦意喪失。最後は、スペインが試合を適当にながしつつ、更に2点をとって4−0という意外な大差をつけてしまいました。

この結果、欧州サッカー史上未踏の記録となる、EURO・W杯の三連制覇の偉業を達成することになったのでした。

ゼロトップ

「ゼロトップ」というシステムは、元々、2005-2006シーズンにASローマの監督であるルチアーノ・スパレッティが、本職FWの選手が相次いで怪我で離脱した際に、「苦し紛れ」に採用したシステムです。

円熟期を迎えていたトッティに、ゲームメイカーとストライカーとしての両方の役割を担わせて、それを2列目の選手たちがタイミングを見計らって飛び出しつつトッティをカバー、もしくはトッティからのラストパスを受けるという戦術でした。

この戦術が功を奏して、セリアA記録となる11連勝を果たすことにより「0トップ」システムは名を上げる事になったのです。

この0トップシステムは、2005-2006シーズンのローマで有名になりましたが、昔からなかったわけではありません。

古くは、1950年代のレアルマドリードでディ・ステファノが、1960年代はブラジルでペレが、1970年代のオランダでヨハン・クライフが、1980年代にもフランスでプラティニが、センターフォワード兼ゲームメイカーとして、センターサークルからペナルティエリアまでを駆けまわっており、0トップの先駆けとも言える存在となっておりました。

また、当時は衝撃のほうが大きくて、マスコミからの指摘をほとんど見かけなかったのですが、2010年W杯の日本代表がトップ下の本田をFWに据えたのも、ゼロトップシステムと言うべきものでした。

ローマや日本代表の0トップは、センターフォワードであるトッティや本田が攻撃時にどこでボールを受け取るかによって速攻と遅攻を使い分け、2列目の選手たちの飛び出しがそれをサポートするという形をとっておりました。

一方、2010年頃のバルセロナでは、メッシが0トップのセンターフォワードに入ります。
この時のバルセロナは驚異的なポゼッション率を誇る質の高いポゼッションサッカーをしており、メッシの0トップもそのポゼッションを高めるための一員として活用されてました。

両者の差は、前者がDFからのプレッシングが少ない位置でボールを受け取る事を主目的としているのに対して、後者はボール支配率の高さを活かすための手段として0トップが使われている点にあるかと思われます。

2012年のスペイン代表も、バルセロナのようにセンターフォワードに入ったセスク・ファブレガスが中盤でのパス回しに参加しポゼッションを高める手段として使われています。

しかしながら、バルセロナのメッシが中盤でのポゼッション維持をしつつも、驚異的な決定力で自身でゴールを量産することができているのに対して、セスクにはそこまでの決定力があるわけではありません。

EURO2012で、2列目からセスクが飛び出して、得点をあげたシーンもありますが、流れの中での得点となると、主に両サイドから中へ外へと動きまわるイニエスタやシルヴァ、あるいはオーバーラップしてくるアルバがフィニッシュするケースの方が多いくらいです。

EURO2012を優勝という結果こそ出せましたが、結局はトーレスの不振とビジャの怪我の影響で「苦し紛れ」に使われた一時しのぎの策であると言えるのではないでしょうか。



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