動かないディフェンス
2013-2014シーズンにおいて、イタリアのユベントスFCが採用した3-5-2フォーメーションについての想定予想です。
なお、ゲーム中フォーメーション表記である「ビアンコネーロ」とは、ユニフォームが「白(ビアンコ)黒(ネロ)」であることから呼ばれている、イタリアリーグのユベントスFCの愛称であります。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2013-2014年シーズンにセリエAを中心に戦ったユベントスの想定スターティングメンバーになります。
近年、セリエAではナポリの成功から見直されつつある3バックを中心に置いたシステムです。
ナポリの3バックがダブルボランチとのゾーンディフェンスを駆使した守備から、サイド経由でのカウンターを武器にしていたのに対して、こちらは中盤5人を中心としたプレッシングサッカーとなります。
2トップにはテベスとジョレンテ。 ともに、2013-14シーズンからの加入選手ですが、1年目から息の合ったコンビを見せ、またコンテの戦術のキモである前線からのプレスも積極的に行うなど、献身的なプレーでチームに貢献します。
中盤のアンカーにピルロ。ミラン時代や代表同様、このチームでも不動の司令塔であり、彼が前を向き前線へボールをつなげていく基点となることが、ユベントスの攻撃にアクセントを生み出します。
攻撃的なセントラルハーフに、ビダルとポグバ。コンテのプレッシングサッカーをよく理解している2人で、攻守に重要な役割を示します。 なお、彼ら以外だとマルキージオが主にその役割を担うこともありました。
サイドハーフには、右がサイドのスペシャリストであるリヒトシュタイナーに対して、左は本来はインサイドハーフの選手でしたがユベントスでウイングハーフにコンバートされたアサモア。 右はイスラ、左はカセレスなどもおり、また、中央にマルキージオが入るとき、ビダルやポグバが左サイドに回ることもありました。
3バックはキエッリーニ、ボヌッチ、バルザーリとイタリアを代表する3選手が担います。
最後の砦はユベントスの顔であり、イタリア代表の顔でもあるブッフォン。同じような立場にあったスペインはレアル・マドリードのカシージャスがスタメンを外されるようになってきた今でも、代表、クラブでまだまだ高いパフォーマンスを見せ、不動の正GKとして君臨し続けるのでした。
2013-2014シーズン当時のユベントスFC
監督はイタリア人のコンテ。現役時代は、ユベントスのキャプテンも務めるボランチで代表でも活躍した選手でした。
引退後、指導者となってから当初はセリエBや中堅以下のチームを率いてぱっとしない成績が続きましたが、転機になったのは2010年のセリエB・シエナの監督時代。
ここで、CFW2人に加えて、ウイング2人を配置するという、今時では珍しい攻撃的な4−2−4を用いてセリエAへ昇格。その実績を買われて、2011年シーズンより2年連続で7位に終わっていたユヴェントスの監督に招聘されるのでした。
当初はユヴェントスのようなビッグクラブで4−2−4という奇抜なシステムが通用するのかと懐疑的にみられていましたが、システムにこだわる事なく、4−2−4、4−4−2、4−3−3、3−5−2と選手の調子や相手にあわせて多種多様なシステムを使いこなす柔軟さを見せて、見事に23勝15分と無敗でユベントスに9シーズンぶりのスクデットをもたらすのであります。
翌年は、過去の八百長試合に絡んで4か月の出場停止期間などもありましたが、そのハンデをも覆して連覇達成。
さらに、迎えた2013−14シーズンでは、33勝3敗2分、積み重ねた勝ち点は実に102という驚異的な強さを発揮してセリエA三連覇を果たすのでした。
動かないディフェンス
表題に書いたユベントスの「動かないディフェンス」とはどのようなものか。
サッカーにおける一般的な守備は、まずボールを持っている相手選手に対して、アプローチをかけに誰かが動くのが普通です。
一方で、コンテが構築したユベントスの守備戦術は、ボールを持っている相手選手の近くのパスコースとドリブルのスペースを先んじて埋めることによって、相手の選択肢を減らしボールを誘導し、相手は気ずいたら屈強な3バックと対峙させられるというアリジゴクのような守備網を、最小限の動きによって構築するものであります。
もちろん、弱点はあります。サイドチェンジを繰り返されると、スペースを埋めるために選手が右へ左へと振られてスキを作られる可能性が高くなるとか、守備能力がさほど高くないピルロの両脇を狙い打つとかの対抗戦術で守備網を切り裂かれることもありました。
ですが、当然3年間でコンテや選手たちも、それに対応すべくシステムの洗練度を上げてきています。そのため、安定感がぐんぐん増していき、セリエAではほ無敵といったチームを作り上げたのでした。
2014年7月にコンテが退任してしまったため、後任のアッレグリが「動かないディフェンス」をそのまま継承するのか、はたまたチーム改造を果たすのか、注目されるところであります。
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