モウリーニョのリベンジ
2011-2012年シーズンにおいて、スペインのレアル・マドリードが採用した4-2-3-1フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2011-2012年シーズン当時のレアル・マドリードについて想定予想のスターティングメンバーです。 2012年リーガの第35節目vsバルセロナとのカンプ・ノウ(バルセロナ本拠地)での「エル・クラシコ」で2−1で勝った時のメンバーになります。
レアル・マドリードと言えば、毎年のように各国の代表クラス選手を加入させ、選手をとっかえひっかえする印象がありますが、このシーズンのレギュラーメンバーは、監督のモウリーニョ含めて、ほとんどが在籍2年目以上の選手で構成されています。
1トップには「最高の」ベンゼマ。好不調の波が激しかった1シーズン前と比べると、2011-12シーズンは体のキレも良くなり、「本当の」ベンゼマを見せることに成功しています。 なお、控えにはイグアインがおり、2トップを組む場合は、大抵、この2人で組まれます。
両サイドにクリスティアーノ・ロナウドとディ・マリア。ディ・マリアがいわゆるウイングハーフ的なプレーをするのに対して、ロナウドはしばしばゴール前に切れ込んでいき、このシーズンは実にリーガで46ゴールを挙げます(ちなみに、得点王はメッシの50G・・・)
中央の司令塔にエジル。典型的なトップ下です。当時のレアルマドリードには、カカという世界でも有数のトップ下が在籍していましたが、その彼を忘れさせるくらいの活躍をしてくれました。 なお、そのカカは主に右サイドでディマリアと併用されていましたが、怪我の影響や本職でないポジションでのプレーを強いられたためか、パフォーマンスはイマイチに終わっています。
ダブルボランチにシャビ・アロンソとケディラ。ともにパス奪取能力が高いですが、アロンソがビボーテとして中盤の底に構えた司令塔となるのに対して、ケディラは攻守に動き回るタイプです。 ケディラが怪我がちなので、ラスやグラネロが使われることもしばしばありました。
サイドバックは、右がアルベロア、左はマルセロがファーストチョイスで、左右ともに攻撃的なスピード感あるドリブルとクロスがうまいタイプです。ただし、クラシコでの先発左サイドはコエントランだったので、想定ではそちらを入れています。
両センターバックは、セルヒオ・ラモスとペペ。ともに、フィジカルを武器とするタイプで、ペペは当たりに強く、ラモスはラインコントロールがうまいタイプです。 他にはカルバーリョ、ヴァラーヌ、アルビオルらがいましたが、ほとんどの試合でラモスとペペがコンビを組んでいました。
最後の砦は、長年、レアルとスペイン代表の正GKを務めてきたカシージャス。代表・クラブともにラウルが去った後にキャプテンも任されている、世界最高峰のGKです。
2011-2012年当時のレアル・マドリード
監督は、ポルトガル人のジョゼ・モウリーニョ。バルセロナのアシスタントコーチとして指導者の勉強をし、FCポルト、チェルシー、インテルの3チームでリーグ制覇を成し遂げて多くのタイトルをもたらしてきた名将です。
守備的な戦術をとるタイプで、勝てる監督だけどつまらないサッカーをするという評価が下されがちですが、純粋に勝利を求めるという意味ではこれ以上ない監督とも言え、数年来、永遠のライバルであるバルセロナに覇権を許してきたマドリードにとって切り札ともいえる人材でもありました。
2010年シーズンにマドリード監督に就任後、リーガ開幕から順調に勝ち星を重ねるものの、最初の「エル・クラシコ」で0−5という屈辱的な敗戦を切欠に、最後までバルセロナに追いつくことができずに2位どまり。
しかしながら、5度あった「エル・クラシコ」での成績は1勝2敗2分であり、内1勝は国内カップ決勝で、バルセロナの三冠を阻止するという貴重な勝利でもありました。
もともと、モウリーニョは対戦相手を研究し、相手にあわせた戦術を採用するタイプの監督であり、対バルセロナにおいても最初のクラシコで惨敗した後は、さまざまな策を講じて互角以上の戦いを繰り広げていました。
策の基本は、バルセロナのポゼッションサッカーに対して、マドリードの高速カウンターを効果的に炸裂させる方策に費やされます。 方針として、ダブルボランチがバルセロナの中盤パス回しに対して、縦に抜かれないように集中。横パスに対しては、センターバックの2人が高めのラインを取り、ボランチとの連携でパスカットを狙う。
前線にはFWとロナウドが残り、バルセロナの高めのDFラインをけん制、攻撃的なMF2人がダブルボランチとCBがバルサのパスワークをディレイしている間に"ゆっくり"と戻りつつ、守備陣がボールを奪ったらすぐにまだ高めの位置に残っている攻撃的MF(主にエジル)にボールを預けて、前線に残るロナウドにつなげる。ボールを奪えなくても、攻撃的MF2人が中盤の守備に加わり、バルサのパスワークにプレッシャーをかけることができる。
"ゆっくり"戻ることでエジルの体力を温存でき、試合中のパフォーマンスを落とすことは少なく、またバルサのDFラインと中盤が間延びすることでショートカウンターの危険を減らすという戦術を構築したのでした。
この戦術により、バルサとはシーズンを通じて互角以上に戦い、リーガ終盤の優勝争いも佳境となったカンプ・ノウでの「エル・クラシコ」を制することによりバルセロナの4連覇を阻止し、勝ち点100というリーガ新記録の成績で久しぶりの優勝を果たすのでありました。
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