オランダ発スペイン経由のゲルマン式トータルフットボール
2014年において、ドイツ代表が採用した4-6-0フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
いわゆるゼロトップシステムです。クローゼという強力なセンターフォワードはいますが、あくまで後半パワープレーでこじ開けに行くときに投入されるにとどまります。
ゼロトップにトーマス・ミュラー。同性のゲルト・ミュラーが敵ゴール前からあまり動かず、それでいてボールを呼び込んでゴールを奪う典型的なセンターフォワードであったのに対して、こちらのミュラーは1.5列目から2列目を得意とするシャドーストライカー。守備も献身的に行うし、得点力も高いという、現代サッカーの申し子ともいえる選手です。
攻撃面で彼を支えるのが、エジルとゲッツェで、彼らもトップ下タイプでありながら、サイドに中にとポジションチェンジを繰り返しつつ、ゴールを目指します。
また、エジルやゲッツェ以外にも、シュールレやポドルスキも試合に出ています。なお、W杯直前まではロイスがレギュラーとして使われていましたが、本大会直前に怪我して代表から脱落しています。
その下でボール奪取と前線への展開をするのが、クロースとケディラ。クロースがパスセンスの高い司令塔タイプであり、ケディラは激しくあたりに行きボール保持者にプレッシャーをかけにいきます。
さらにこの2人の守備面でのケアをするのがアンカーのラーム。元はサイドバックの選手ですが、バイエルンで同じ4-6-0のアンカーを任されて、サイドバックでの起用時同様に高いレベルでのプレーをこなしています。
なお、他に中盤の守備的な選手としては、パスセンスの高いシュバインシュタイガーや、豊富な運動量を誇るクラマーなども良く使われています。
4バックはラインこそ高めにとりますが、オーバーラップはほとんどなく、4人とも本来センターバックタイプの選手です。 フンメルスはロングフィードもこなせるタイプですが、他3人はフィジカル面が強く対人能力の高いタイプになります。
最後の砦はノイアー。ゼップ・マイヤーから連なる「世界的な実力を持つドイツ代表GK」の流れを受け継いだ選手で、いくどもクラブで代表でチームを助けてきました。
2014年(W杯グループリーグ)当時のドイツ代表
監督はドイツ人のヨアヒム・レーヴ。現役時代は代表経験なし。35歳で引退後はドイツやトルコ、オーストリアの中堅チームを率いて、目立った成績を残せないままでした。
レーヴにとって転機が訪れたのは2004年。ドイツ代表監督に就任したクリンスマンに請われて、代表の戦術担当コーチに抜擢。 そして、2006年のドイツW杯で、前評判を覆して3位の結果を残したドイツ代表を陰で支えた名参謀として名声を高め、大会終了後にクリンスマンが辞任した後を請けて、そのままドイツ代表監督に就任。
以降、EURO2008で準優勝、2010南アフリカW杯で3位、EURO2012で3位と優勝こそ逃していますが、大舞台で好成績を残し続けて、2000年代前半期の不振を脱して、サッカー大国ドイツの完全復活を成し遂げるのでした。
そして、2014年ブラジルW杯。欧州予選は、スウェーデン、オーストリア、アイルランドといった曲者が揃ったグループCを9勝1分と無敗で首位通過します。
そして、W杯本大会。今や欧州サッカーシーンにおいても、名うての戦術理論家として名高いレーヴが取った策は0トップ+ポゼッションサッカーでした。
ドイツ代表と言えば、ゲルト・ミュラー、クリンスマン、フェラー、ビアホフ、クローゼなど強力な大型FWの決定力を武器とする印象が強いですが、純粋なセンターFWはそのクローゼのみを招集。
ブンデスリーガを圧倒的な強さで優勝したバイエルン・ミュンヘンの選手を中心に招集し、そのバイエルンでやっているグアルディオラ監督が持ち込んだバルセロナ的なゼロトップ+ポゼッションをアレンジし、カウンターを織り交ぜた混合スタイルのシステムを採用したのです。
W杯本大会のグループリーグではアメリカ、ガーナ、ポルトガルが同組となります。クリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルが最大の難敵と思われていましたが、その難敵に4−0で圧勝。ガーナ戦こそ2−2で引き分けてしまいますが、アメリカを1−0で下し、堂々1位通過。
ブラジル大会はポゼッションサッカーの大家スペインがGLで敗退し、本家オランダやジャイアントキリング連発のコスタリカが5バックのカウンターサッカーで勝ち上がるなど、カウンターサッカーの台頭が目につきますが、その両方の中間をバランスよく組み合わせたドイツ代表もまた、優勝候補の一角にふさわしいサッカーを見せてくれることでしょう。
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