英国紳士が率いる質実剛健なタレント集団
2021年に開催されたEURO2020において、イングランド代表が採用した3-4-2-1フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、EURO2020の決勝戦、対イタリア戦におけるイングランド代表におけるスターティングメンバーです。
戦術の基本線はポゼッションを高くとりながら、トップ下のマウントやセンターハーフのフィリップスらが攻撃をつなげる感じで、左サイドのショー、スターリング(左図では右にいますが、メインポジションは左ウイング)を中心に攻撃を仕掛けて最後は中央のケインにボールを集める感じになります。
エースストライカーはこのチーム最大のスターとも言えるハリー・ケイン。近代的な万能型センターフォワードで、ゴールを挙げるだけでなくポストプレイも前線守備もいとわない献身性も兼ね備えています。
ウイングのスターリングはスピードスターで爆発力のある選手ですが、一方で不調に陥りやすいという側面もありました。 この2人にトップ下というよりはボックストゥボックスなマウントが中盤とのリンクマンの役目を担います。
攻撃的な選手としては、ほかに、4バックの時は右ウイングに入るサカやサンチョ、主に左サイドのフィル・フォーデンやセンターフォワードの控えになるラッシュフォードなどかなりの選手層を誇ります。
中盤はダブルボランチで、司令塔タイプのカルバン・フィリップスと、その用心棒になるデクラン・ライスの二人。ともに運動量豊富なタイプですが、役割は対照的です。
今回の想定では3バックとしていますが、EURO2020の決勝戦は5バック気味に戦っていました。 左ウイングバックのショーは攻撃の一角にもなるようにアップダウンを繰り返しますが、右サイドのトリッピアーはクロス精度の高さは武器ですがやや下がり目のタイプ。
3人のセンターバックのうち、マグワイアは高さがありストーンズはスピードのある大型センターバックで4バックの時はこの2人が真ん中に陣取ります。 3人目のウォーカーは4バックの時は右サイドバックに入るタイプ。こちらもフィジカルを活かした守備力の高い選手です。
近年のイングランドはGKが泣き所と言われ続けており、このチームのピックフォードも安定的なセービングを誇りハイボールに強い点は評価されますが、足元の技術がないためポゼッション重視のチームのキーパーとしてはあまり評価が上がってこなかったりしています。
2021年(EURO2020)当時のイングランド代表
監督はガレス・サウスゲート。選手時代はクリスタルパレス、アルトン・ヴィラ、ミドルズブラと3つの中堅チームでそれぞれ150試合以上出場する職人肌のセンターバックでイングランド代表としても57キャップを記録しています。 指導者のキャリアは現役選手中の2006年から、ミドルズブラ所属時に当時の監督がイングランド代表監督に引き抜かれたことで暫定的にキャプテンであった彼がチームを率いることになりました。
シーズン後に現役引退して正式に監督となり約3年半、そのあと指導者としてのキャリアに空白期間はあるものの、イングランドU-21代表監督を経て、2016年、当時の代表監督がスキャンダルで突如辞任したことで急遽イングランド代表の暫定監督に抜擢。その後チーム成績が良かったことで、正式に代表監督に就任することになりました。
経歴的には地味な人物ですが、その冷静さ誠実さなどから人望もありスター選手を多く抱えるタレント集団であるイングランドを巧みに率いていきます。
最初の大仕事は2018年のワールドカップ・ロシア大会。イングランド代表の伝統的な4バック2トップにこだわらず、柔軟なチーム作りをして、近年メンバーのわりには結果が残せないと言われてきたイングランド代表をベスト4に導きます。
COVID-19などの影響で開催が1年延期になったEURO2020の予選は7勝1敗で危なげなく通過。
EUROの本戦、グループリーグはクロアチア、スコットランド、チェコと同組になり2得点0失点ながら2勝1分で首位通過で決勝トーナメントに進出。 得点力はさほどでもないながら、マグワイア、ストーンズの両センターバックの堅実な守備力を武器にした戦いぶりには久方ぶりのビッグタイトルを期待する声も大きくなっていきます。
決勝トーナメントの1回戦はドイツを2−0、2回戦はウクライナを4−0で撃破。準決勝ではデンマーク相手に初失点してしまいますが延長で2−1と勝ち上がり、イタリアとの決勝戦を迎えます。
本大会ではメインに攻撃的な4-2-3-1を採用してましたが、この試合は大事に行きたいのかドイツ戦と同様に守備的な3-4-2-1を採用。 試合開始直後の前半2分でいきなりショーのゴール(EURO大会史上最速)で先制したイングランドは両ウイングバックがベタ引きになり、強固な防衛ブロックでイタリアの攻撃を防ぎ続けますが、イタリアが後半ゼロトップに切り替え中盤を制圧するようになってからは、完全に防戦一方。 後半22分に追いつかれた後は、4-3-3に組み替えたものの攻め手が作れない状態のまま、結局、延長120分を戦い切りPK戦となります。
そのPK戦、最後は3人続けて外したイングランドが試合結果1-1のPK戦2-3で敗れることになるのですが、その外した3人が試合終了間際にPK戦を見越して投入した2人のFWと、5人目というプレッシャーのかかる場面でキッカーを任せた若干19歳のサカであったことから、決勝までこれたのはサウスゲート監督のおかげという流れが一転して、監督のPK采配ミスとして世間にたたかれてしまうことになるのでした。
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