神の子どもたちはみな踊る
2022年のワールドカップ・カタール大会において、アルゼンチン代表チームが採用した4-3-3フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2022年W杯カタール本大会決勝vsフランス戦におけるアルゼンチン代表のスターティングメンバーです。
この大会のアルゼンチン代表は予選も含めて4-4-1-1や4-2-3-1も使っており、このメンバーでの4-3-3は決勝戦が最初で最後だったりします。 このメンバーですと、エースのメッシ、GKのマルティネスとセンターバックのオタメンディの3人だけがカタールの本大会で全試合出場していますが、ほかのメンバーは多かれ少なかれ何人かの入れ替えがされています。
メッシがこのチームのエースで決勝戦は彼が最も得意とする右寄りのセカンドトップ。他の試合ではゼロトップ気味のセンターフォーワードもしていますが、基本彼だけが守備を免除された完全なフリーロールで無二の存在。
小柄ながらスピードがあり裏に抜けるのが得意なセンターフォーワードやウイングもできるアルバレス(彼はメッシが守備しないので右寄りの前線守備も担当していた)、パスが得意なゲームメイカーのマック・アリスター、アンカーであり状況によっては最終ラインにも加わるしビルドアップもできるエンソ・フェルナンデス、この3人は本大会の初戦(唯一敗戦したサウジアラビア戦)では先発しておらず、予選でも出場数が少ない若手メンバーでしたが、大会途中からレギュラーとして活躍しました。
攻撃陣では、決勝は左ウイングとして出場しているディ・マリアは他の試合ではむしろ右寄りで出場している試合のほうが多く、運動量豊富なセンターハーフのデ・パウルも試合によってはサイドハーフを務めたりするなど、ポジションは結構流動的です。
ベテランのオタメンディは対人能力の高いタイプですが足下の技術は低く、ビルドアップは上述のフェルナンデスか、もう一人のセンターバックであるロメロが担当。
サイドバックの左は決勝は攻守にバランスの良いタグリアフィコが先発していますが、フィジカルに強い攻撃的なアクーニャも先発でよく使われます。 一方、右は南米予選では守備的なモンティエルが先発していましたが、W杯本大会のほとんどの試合でスピードと運動量が高いレベルにある攻撃的なモリーナがレギュラーを奪取しています。
GKのエミリアーノ・マルティネスは決勝戦後の言動で物議をかもしましたが、もともとキャッチング技術の高いキーパーであり大会では準々決勝のオランダ戦、決勝のフランス戦ではPKストッパーとして勝利に大きく貢献しました。
ここ数年のアルゼンチン代表といえば攻撃力の高さと裏腹に守備陣は個の力に頼りがちでもろいところがありましたが、本大会では4バック基調ながらサイドバックが上がるときにアンカーを下げて3バックにして後方からのビルドアップも使うなど、なかなかに組織だったディフェンスも見せています。
総じてみると、メッシ以外の全員で守備を行い、攻撃はメッシ中心ですがフリーになりがちな左サイド(特に決勝はディ・マリアのパフォーマンスが大きかった)もうまく使うなど機動性の高い柔軟な試合巧者ぶりを示していました。
2022年当時のアルゼンチン代表
監督はアルゼンチン人のリオネル・スカローニ。現役時代は主にデポルティーボ・ラ・コルーニャの守備的な選手として活躍し代表にも何度か招集されていましたがスタープレイヤーという感じではなく、現役時代は「陽気で、ポジション争いに燃え、絵に描いたようなアルゼンチン人だった」と同僚に評されるような選手でした。
2015年に現役引退後はセビージャのアシスタントコーチを経てアルゼンチン代表のアシスタントコーチを務めた2018年のワールドカップ・ロシア大会後に前任の監督が早期敗退(に加えてメッシと折り合いが悪かったことも影響しているとか)の責任を取り解任されたあと、暫定監督からそのままスライドするように正式に監督に就任します。 とはいえ、無名に近く監督経験のない若手指導者ということもあり、正式に監督就任した直後は、むしろ同時に代表スタッフ入りしたかつてのスター選手(アイマール)のほうがニュースで大きく取り上げられるなど、ほとんど期待されていないことがうかがわれました。
そんなスカローニ監督が就任したころのアルゼンチン代表はスタープレイヤーが多くメッシが特別扱いされることで、かえってチームとしてまとまりが欠けるともいわれておりメッシ自身も代表引退を示唆していましたが、まずそのメッシを一時的に代表から外し、若手を中心にいろんな選手を招集してチームのベースを作ることから始めています。
その結果、かつて少年時代に「神の子」メッシに憧れた選手たちが多く代表入り。また、ディ・マリアやオタメンディのようにメッシと関係が良好なベテランは残り、チームとして満を持してメッシの代表復帰を促すことに成功。
メッシが代表復帰した直後の2019年コパ・アメリカこそ3位に終わりますが、2021年のコパ・アメリカで28年ぶりの優勝。さらに36戦連続無敗のままワールドカップ・カタール大会の本選に駒を進めます。
その本選のグループステージ初戦でサウジアラビアにまさかの大金星を献上してしまいますが、先発メンバーやシステムを巧みに入れ替えチームを立て直し、メキシコ、ポーランドに連勝してグループステージは1位通過。
決勝トーナメントは準々決勝のオランダ戦こそ後半に追いつかれてPK戦で辛くも勝利していますが、オーストラリア、オランダ、クロアチアを倒して決勝に進みます。
決勝戦の相手はメッシ、クリロナの後継ともいえる次代のスーパースター、エムバペを擁するフランス。 共に一歩も引かない実に見ごたえがある試合となりますが。結局、試合としては引き分け。ワールドカップ決勝では3度目となるPK戦を制したアルゼンチンが実に36年ぶり3回目の優勝を果たすのでありました。
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