燃える炎の快男児
2018年のワールドカップにおいてクロアチア代表が採用した4-1-4-1フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2018年ロシアW杯決勝戦の対フランス戦におけるクロアチア代表のスターティングメンバーです。
アンカーのブロソビッチではなく、クラマリッチをトップ下に配して4-2-3-1で戦う事もありましたが、基本的には、ラキチティッチとモドリッチをより前線近くに置くシステムになります。
アンカーのブロソビッチがレジスタとなり、レアルマドリード、バルセロナという2大クラブで司令塔役を務める、モドリッチ、ラキティッチの2枚看板を経由して、中に切れ込むタイプの両サイドのウインガーや、1トップとして豊富なスタミナを持ち前線を動き回るマンジュキッチがフィニッシュするという形が戦術の中心。
サイドバックの2人はともにアップダウン激しいタイプで、スピードとスタミナを併せ持ち、攻撃時はウインガーとセンターハーフの2人らと三角形を作りながら攻め上がります。
自称・世界最高のDFロヴレンとヴィダが中央を固めます。この2人はフィジカルに強いタイプ。
最後の砦のスバシッチは、長年モナコ、クロアチア代表の正GKを勤めるPKストッパーで、世界を対象としたGKのトップ10記事などでは、ほぼ確実に7位あたりに入ってくる名手であります。
2018年(W杯準優勝)当時のクロアチア代表
監督はクロアチア人のズラトコ・ダリッチ。 選手時代はほぼ無名で代表歴も無し。レギュラーを務めたクロアチアリーグの中堅クラブ、NKヴァルテクスで引退後コーチを経て2005年に監督になったのが最初の指導歴です。
その後、クロアチア、アルバニアでぼちぼちの成績を残し、中東へ。 2014年にUAEのアルアインの監督に就任してから、彼の経歴に箔が付き始めます。 就任3年間で、リーグ優勝2回、カップ優勝3回のタイトルを獲得し、アルアインのクラブ世界ランキングを335位から122位までランクアップし、UAEの最優秀監督にも輝きます。
2017年10月、ワールドカップ欧州予選の9試合目が終わった翌日、クロアチアサッカー協会は、予選突破を決められなかった前任者を更迭し、クロアチア国内ではあまり知られていなかったダリッチを監督に抜擢。ただし、予選突破できなければ、即座に解任すると公表された上で、代理監督としての就任でした。
結局、グループリーグ最終戦で、ウクライナに2−0で勝利しGL2位を決め、プレーオフのギリシャ戦も1勝1分として、晴れて、ロシアW杯本戦出場と、ダリッチ監督の正式就任が決まります。
W杯直前の親善試合では、2勝2敗とまずまずの成績を残しつつも、若干不安が残る内容で、前評判はそこまで高いものではありませんでした。
2018年のロシアW杯、グループDは、ナイジェリア、アルゼンチンと、欧州予選で同グループの1位だったアイスランドと同組という難しいグループに入ってしまいます。
ですが、ナイジェリアの初戦を2−0で快勝。 そして、事件が起きます。 フィオレンティーナやミランなどで活躍しているFWのカリニッチが途中出場を拒絶します。 彼は、親善試合でも同じように「背中が痛い」と言って途中出場を拒んでいたこともあったのですが、ダリッチ監督は、カリニッチの行為に対して、即座の帰国を命じます。
W杯では初戦が終わった後、予備登録選手の補充ができなくなるため、カリニッチを帰国させることで1人不足の22人で戦うことになるのですが、この処置は国内および選手たちに支持され、「これで、ダリッチは真の監督になった」と言わしめる結果となります。
この後、最大の難敵アルゼンチンを3−0で下し、アイスランドにも2−1で勝利。見事GLを1位通過することで、クロアチア代表はダークホース的な存在として認知されます。
決勝トーナメントは、接戦続きながら、デンマーク、ロシアには延長PK勝ち。準決勝のイングランド戦も延長戦を何とか制して、クロアチア建国以来初のW杯決勝進出を果たします。
決勝戦のフランス戦では、ブロゾビッチ以外のメンバーほぼ固定して戦ってきたうえで延長3試合続けての疲労がアリアリと出ており、大会MVPに輝くモドリッチや、ラキティッチらも満足に動けず、フランス相手に2−4で完敗してしまいます。 とはいえ、2018年の「ヴァトレニ」(クロアチア語で”炎の男”)たちが、クロアチアサッカー史に残る偉業を達成したことは紛れもないことなのでありました。
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