殴られる前提のカウンターアタック
オーストリア・スイス共同開催のEURO2008でオランダ代表が採用した4-2-3-1フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2008年のEUROオーストリア・スイス大会におけるオランダ代表のスターティングメンバー想定です。EURO本選の4試合中3試合がこのメンバー(残りの1試合はGS突破決定後のある意味消化試合でのターンオーバー)になります。
ディフェンス陣には心もとなさがあるものの、中盤および前線の攻撃陣は控えも含めてワールドクラスのメンバーが名を連ねています。
基本的にはオランダらしくなくポゼッションは取らずにカウンターが戦術のメインになりますが、堅守速攻というよりは相手が攻め切れなかったら強力なしっぺ返しをするとでもいうような戦い方をしています。
ワントップは万能型ストライカーであるファン・ニステルローイ。監督のファン・バステンとは仲が悪いと言われていましたが、この大会前には和解し代表に復帰しています。
中盤アタッカーは左から、スナイデル、ファン・デル・ファールト、カイト。 前二者は若き日はアヤックスユースのチームメイトであり、この大会直後にニステルローイ含めてレアル・マドリードでも同僚となります。2人とも攻撃的なことは何でもこなせるタイプでした。
一方、右ウイングのカイトはもともと典型的なストライカータイプのセンターフォワードでしたが、ちょうどこのころ、所属クラブ(リヴァプール)のチーム事情で右ウイングとして使われており、ウイングストライカーとしての適性の高さを示していたところです。
ダブルボランチは大型のセンターハーフタイプであるエンヘラールに、オランダ代表の「デ・ヨング」のうち「芝刈り機」の異名を誇った守備的MFのナイジェル・デ・ヨング。
一方でディフェンダーはスピードがあるタイプが多く、さらに左サイドバックのファン・ブロンクホルストは攻撃的なサイドバックであるため、このチームの攻撃は左サイドから起点になることが多くなります。
ゴールキーパーは10年以上オランダ代表のゴールマウスを守り続けてきたファン・デル・サール。身長が高く手足の長さを活かした安定的なセービングが武器で「ヨーロッパ屈指のGK」と長年謳われてきた選手です。
2008年当時のオランダ代表
監督はオランダ人のマルコ・ファン・バステン。現役時代は三度バロンドールを獲得するほどの名ストライカーでしたが、怪我も多く30歳で引退。その後は10年間サッカー界から離れていたものの、アヤックスのコーチを経て、2004年にいきなりオランダ代表監督に就任。
長らくサッカーから離れていたうえに指導者経験がほとんどない彼を代表監督に据えることや名前にとらわれない選手選考をするため、疑問の声も多く上がるものの、2006年のドイツW杯は難敵揃いの欧州予選および本選のGSを無敗で突破。決勝トーナメント1回戦で敗れたものの、その手腕を評価され2010年まで契約延長(ただし、EURO2008の終了ともに退任)が延長されて迎えた就任4年目の2008年となります。
予選はルーマニアやブルガリアと同居したグループでここ数年の結果から順当に抜け出せると思いきや、ルーマニアに勝てず伏兵ベラルーシにも1敗するなど、結構危ないところもありながらなんとか2位通過。
さらに本選のグループステージは、2006年W杯の優勝、準優勝国であるフランス、イタリアに予選で勝てなかったルーマニアと同居となり多少の不安を残しつつ本選に挑みます。
だが、そんな不安はイタリアに3-0、フランスに4-1と圧勝することで払拭され、アタッカー陣のダイナミックな攻撃(特にイタリア戦で見せたスナイデルのスーパーゴール)は今大会最強の攻撃陣とも称されることになります。
そんな魅力的なサッカーを繰り広げたオランダでしたが、これもオランダらしく決勝トーナメント1回戦でロシア相手に延長戦にもつれこみ1-3で敗れてしまいます。 バステン監督は選手のコンディションを理由に挙げていますが、ルーマニア戦はターンオーバーして休ませていたのに?とか、その休ませたことが問題だったのだとか、ロシアが仕掛けたトラップディフェンスにまんまとハマってしまったなど、多くの批評家がいろいろと原因を上げていましたが、この大会で最も魅力的なサッカーをしていた評価が覆ることはないのでした。
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