柔軟性の高い可変システム
2015年シーズンのサンフレッチェ広島が採用した3-6-1フォーメーションについての想定予想です。
モデルの想定・その他のケース
左図は、2015年シーズンにおけるサンフレッチェ広島のスターティングメンバー想定です。1stステージ第7節の対清水戦などで採用されたメンバーになります。
ダブルボランチは似たタイプの2人ですが、この年のJリーグMVPになる主将の青山がこのチームの心臓部です。相棒になる森崎兄は最終ラインまで下がるなどして変則システムのバランサーとして機能しますが、青山はどんな時も中盤でかじ取り役、ボール奪取役を担い続けます。
ディフェンスの裏を突くのがうまく長年コンスタントにゴールを上げ続ける佐藤寿をカバーするのはシャドーストライカーの2人で、スピードにパワーを併せ持つドゥグラスともともとボランチでありテクニカルなタイプの柴崎が佐藤を補佐します。 補佐といってもドゥグラスは自ら積極的にゴールを狙い続け、Jリーグ2位の21得点を挙げていました。
変則システムゆえに攻撃時はウイング、守備時はサイドバックまでアップダウンをスピーディに繰り返す両サイドは右がミキッチで不動。左は柏や清水などが入ります。
3バックは不動で、右サイドバックもでき対人能力も高い塩谷、競り合いに強くビルドアップ能力も高い千葉、マンマークに強い水本と三者三様のメンバーが試合では組織的に絡み合います。
最後の砦は林。この年は三連続PKストップなども記録し、安定したセービング能力に裏付けられた確かな守備力を発揮していました。
ベースは3-6-1ですが攻撃時はサイドが前がかりになり森埼が最終ラインに下がる4-1-5、守備時は両サイドが下がりシャドーの2人が中盤の左右に展開する5-4-1とスムーズにシステムを変えています。 それまで攻撃的な印象の強かった広島の3バックでしたが、このシーズンはむしろ守備に力を入れており、森崎と青山の2人がうまくバランスを取るシーンが多く見られました。
2015年当時のサンフレッチェ広島
監督は日本人の森保一。現役時代はJリーグ元年以前からサンフレッチェの前身であるマツダでプレーしており、日本代表メンバーとして「ドーハの悲劇」も経験している名ボランチでした。 引退後、年代別日本代表やサンフレッチェ、アルビレックス新潟などのコーチを歴任。 2012年から経営難で前任のペトロビッチを引き留めることができず、補強もままならない広島の事情をよく知る人材として監督に抜擢されます。
ペトロビッチ監督の攻撃的な3バックに組織的な守備を整理することで攻撃と守備時に自在に変化するシステムを構築。このシステムを引っ提げて、就任年にクラブ史上初のJ1優勝、次の年も連覇を果たすなど後に日本代表監督に抜擢されるほどの指導力を垣間見せます。
ですが、2014年は8位に終わり広島の破竹の勢いも止まったと思われていたのが2015年シーズンでした。
シーズン前にシャドーストライカータイプでこれまで10番をつけていた高萩と石原のレギュラーOHが2人いなくなる緊急事態。急遽、徳島からドゥグラスを補強し本来ボランチである柴崎をコンバートするなどして対応します。
1stステージこそ浦和が独走し3位までにとどまりますが、2ndステージはここ数年勝てなかった浦和に久しぶりに勝利するなどして、最終的に2ndステージ優勝+年間勝ち点1位でフィニッシュ。 チャンピォンシップは勝ち上がってきたガンバ大阪相手に2戦合計4-3で競り勝ち、4年で3度目の優勝となります。
ナビスコ杯は予選落ち、天皇杯はベスト4どまりでしたが、クラブワールドカップでは準決勝まで進出。リーベルプレートに敗れたものの3位決定戦でACL代表の広州恒大を破り、日本クラブ史上3チーム目の3位入賞を果たしました。
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